金蝶ウスターソース

長崎名物と言えば、「皿うどん」。その皿うどんに欠かせない“名脇役”が、金蝶ウスターソース(通称・金蝶ソース)です。スパイスの効いた辛めのソースが、皿うどんの甘めの餡(あん)に、絶妙なアクセントを加え、味を引き立てます。
長崎生まれの金蝶ソースは長崎人なら、知らない人はいない調味料。実は開発当時の詳しい資料は残っておらず、造り手だけに語り継がれてきた、まさに秘伝の味なのです。
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金蝶ソースの生みの親は、長崎市大浦町の醤油店、黒田商店の初代、黒田長一さんです。孫の三代目、勝二郎さんによりますと、長一さんは昭和初期、油を多く使う中華料理に合うウスターソース造りに乗り出したそうです。
黒田商店は旧外国人居留地にあり、ウスターソースの本場である、イギリスの方たちが多く在住していたことが背景にあります。イギリス文化の影響を受けていた大浦町には戦前から数件のソースの製造所があり、ウスターソースは身近な調味料だったのです。

長一さんは、試作品のソースを持って中華街に足しげく通い、中華料理店の料理人たちに意見をもらいました。皿うどん発祥の店とされる「四海楼」の創業者、陳平順さんにも、何度もアドバイスを求めたそうです。
「もっと甘くしてほしい」「もっと香辛料を効かせたらどうか」。さまざまな意見をもとにソースの改良を重ね、「長崎が求めたものを味にした」(勝二郎さん)。そうして行き着いたのが、甘めの皿うどんを最後まで食べ飽きさせない、酸味が効いた辛口ソースでした。
※現在”金蝶ウスターソース”は
長工醤油味噌(協)が製造し、
チョーコー醤油(株)が販売しております。
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黒田商店の屋号がキッコウチョウだったため、そこからもじってキンチョウになったとの説があります。
キンチョウのチョウは初代 黒田長一や長崎から『長』の字を当てようとしていたが、黒田商店が蝶々夫人ゆかりの大浦町だったことから、『蝶』の字を頂くことになったとも言われております。ちなみに蝶を形どったロゴマークは、長一さんが15分くらいで描きあげたものだという。

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たっぷりのお酢に、たくさんの種類の香辛料。長崎人に親しまれた秘伝の味のベースは、今も守られています。勝二郎さんはベースを大事にしながら、「現代人の舌に合うように、味は微調整してきました」と話します。時代の流れの中で、ちょっとずつ改良を加え、今に味を引き継いでいます。

金蝶ソースはタイム、クローブ、セージ、ナツメグなど、様々な種類の香辛料を使用しています。甘くて濃厚なウスターソースが市場に多い中で、ぴりりとスパイシーで酸味の効いた、他にはない“オンリーワン"のウスターソース。長崎には、なくてはならない味です。
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出前で大皿の皿うどんを注文すると、栄養ドリンクの空瓶に入ったソースも一緒に届いてました。最近は小袋のお取扱店舗が増え、栄養ドリンクを使っているお店は少なくなりました。
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孤独のグルメ シーズン6 第7話
『渋谷区道玄坂の皿うどんと春巻』
渋谷の長崎飯店さんで、
五郎さんが皿うどんに
ソースをかけるシーンは必見


